先日、遺贈寄附の研修を受けました。

遺贈寄附とは聞きなれない言葉ですが、「遺言による寄附」「相続財産の寄附」「信託による寄附」などにより遺産をNPOや公益公法人、国、地方公共団体に寄附することを言います。
遺贈寄附により、自分の意志で自分の亡き後の財産を自分の希望する活動に残すことができるというわけです。

今、なぜ遺贈寄附なのでしょうか?

出生率の低下や生涯未婚率の上昇により、自分の財産を残す人がいない。相続人がいなければ、自分の意志に関係なく、財産は国庫に入ってしまう。また、相続人がいても付き合いが希薄。子供は自立していて子供に全財産を残す必要がない等々の理由が考えられます。

自分亡き後自分の思いを寄附という形で実現するには、遺言書が必要です。公正証書という形が望ましいそうです。例えば、エンディングノートに寄附先を記載することも考えられますが、エンディングノートは遺言書ではないので法的拘束力はありません。その後の処理は相続人に任されます。いくら亡くなった人が寄附をしたいとエンディングノートに綴っていたとしても、相続人にその意思がなければ、故人の思いは届きません。遺言書の書き方によっては、せっかくの遺贈の気持ちを、相手側の団体に拒否される場合もあります。遺言を書くときは専門家に相談することが大切です。

そして、一番大切なことは、遺贈先の選定です。自分が、交流のある信頼できる団体があればいいのですが、そうでない場合は注意深く選定する必要があります。ネットや市役所、非営利団体の中間支援組織、地域のコミュニティ財団にきくことが有効だそうです。内閣府のポータルサイトに事業報告が公表されていることが絶対条件です。また、その団体をアポイントなしに訪問して快く見学させてもらえるかも選定材料になります。団体によっては現金の寄附しか受け付けないという所もあるそうなので、そういった情報収集も必要です。

また、様々な税金の問題も発生します。例えば、不動産をそのまま遺贈する場合は、みなし譲渡課税といって、亡くなった方に譲渡所得税が課されます。財産を換金して現金を寄付する場合には、相続人に対して譲渡所得税が課されます。詳しいことは省略しますが、それぞれのケースで税金の問題が発生することも頭に置いておく必要がありそうです。自分の思いをかなえたいと願っても後に残された相続人に負担をかけることになっては元も子もありません。

自分の財産を、自分の亡き後社会のために役立てたい、そんな思いが無駄にならないようにしてほしいと思います。

 

日本では、寄附文化はまだまだ発展途上ですが、こういう方法もあるということを勉強でき、何よりもそこに税理士の役割もあるのだと認識した研修会でした。